練習場の妖怪
(2001/11/11〜11/13)


 真面目な日記が続いたので、ちょっと息抜きを。

 ごるふの良いところは、練習してても楽しい事である。中には「練習なんかした事が無い!」というツワモノもいるが、少なくとも私は練習場に行く事自体が楽しい。練習場にはOBが無いし、さらにスコアをつけなくて良いからだろう。

 しかし、この研鑽を積む神聖な場所で、不快に思うことが少なからずある。よく少年野球のコーチなどが「野球をするヤツに悪いヤツはいない!」と阿呆な事をほざく(それだったら国民全員に野球を義務付ければ警察は要らんじゃないか)が、事ごるふに関しては口が裂けてもそんな事はいえないのが実情である。今日は、練習場で良く見かける妖怪を紹介する。(妖怪度はどの程度人間離れしているかの指標。5段階評価)

 ぬりかべ女(妖怪度1)
 顔に漆喰を塗りこんだような派手な顔が特徴。壁のような大きな顔を持つ(事が多いが、態度がでかいからそう見えるだけかもしれない)。服装も派手なことが多い。それだけなら人に迷惑をかけないが、一瓶全部振りかけてんのか!というぐらいのきつい香水の匂いを発して周囲の人に吐き気を催す。スウィングするたびに匂いがきつくなる。退治方法はない(この手の妖怪に対し、話せばわかるなどと絶対思ってはならない)。打席を替わるしかない。

 サケクサー(妖怪度2)
 酒臭い息を周囲に発しながらご機嫌で練習していたら、それがサケクサーである。夜や休日の練習場に非常に多く出没する。とにかく臭い。私は左右の打席をサケクサーに占拠された事が一度あるが、あまりの臭さに頭が割れそうに痒くなった。この妖怪は絶対数が多いので、退治は難しい。帰りに車で後をつけながら携帯電話で警察にタレこむぐらいであるが、さすがに私もそこまでしたことは無い。せいぜいそいつの席にエチケットガムをそっと置く程度であろう。

 やかまし童子(わらし)(妖怪度2)
 仲間数人で出没する。ごるふを始めたばかりらしく、アイアンは父親のお下がりであるがバッグは必ずナイキのスタンドバッグで、ドライバーもナイキ(しかも275だったりする)である。とにかく五月蝿い。顔付きもハエそっくりで、スウィングもハエそっくりである。頭の中もハエ並みにちがいない。一打打つたびに「うーわ、スゲー!見たかオメー!」とか、「あっ、ミスった。クソ」とか、とにかく喋っているのか打っているのかわからない位やかましい。一打ごとに感想を言わないといけないとでも思っているのか。しかし、この妖怪は別名「プッツン童子」と言われるぐらい怒りっぽいので、マシンガンなどの銃器類を携帯していない時は相手にするべきではない。ハエは放っておけば知らぬ間に飛んでいくものだ。


 発情虫(妖怪度2)
 アベックで来ているごるふぁーの半分はこの妖怪である。オスは例外なく下手糞で、「おかしいなあ」と言いながら打ち続ける。10球に1球いい当たりが出ると、後ろを振り返ってにやっと笑う。メスの方は殆どが不機嫌そうで、退屈そうで、寒そうにしている。こんな自分勝手な男だから、鉄板ですぐに別れる事になるだろう。いつ別れようか考えているのかもしれない。中には、オスと波長が合うのか、「私も打ちたぁ〜い」と言うメスもいるが、ミュールを履いてきているので裸足になって打っている。
 オスは、内心では親父にだまって持ち出したクラブを壊さないかはらはらしながら、それでも嬉しそうに手取り足取り教えている。でもすぐにイライラしてきて強引に止めさせ、また自分で打ち出す。ただし、ここまではまだ許せる。微笑ましいといって良い範囲だ。
 この前など、メスがオスのひざの上に座って交尾寸前までいちゃついていた。許せん(断じて羨ましがっている訳ではない)。退治方法は、周りの親父と結託してじっと見つめる事であるが、この妖怪はつがいの相手しか見えない事が多いので徒労に終わるだろう。たかが虫だと思うしかない。

 けむり男(妖怪度3)
 火の着いたタバコを灰皿に置いたまま練習する。または消したつもりのタバコがくすぶっていて、その煙で攻撃してくる。中にはくわえタバコのまま練習するヤツもいる。喫煙者にとっても、他人の煙、特にくすぶったり放置されたタバコの煙は不快な匂いを発するが、本人は全く気づいていない。恐らく神経が無いのだろう。退治方法は、水や飲み物をそのくすぶったタバコにかけるしかない。ただし、くわえタバコに向かってジュースをかけたりするとまず間違いなくケンカになるので気をつけなければいけない。

 ジャンボ入道(妖怪度3)
 読んで字のごとくである。知ってか知らずかジ○ャンボ尾崎の真似をしているらしい。真似されるジャ○ンボが可哀想である。犬のプリントの入ったポロやセーターを着て、ボトムは未だに尻ポケットに刺繍の入ったジーンズである(今どきどこに売ってるのか?)。この妖怪は不自然なほど体がでかい事も多い。従って、声も大きい。人間に直接迷惑をかけるわけではないが、見ているだけで腹が立つのはコースでの傍若無人な振る舞いが容易に想像できるからかもしれない。また、容易にしゃべりオヤジ(後述)に変化するので群れた時は注意が必要だ。

 ぱなし君(妖怪度4)
 ジュースの紙コップを置きっぱなし。ボールのかごを置きっぱなし。汚いおしぼり(人が使った後のおしぼりって、なぜあんなに気持ち悪いのか?)も置きっぱなし。すぐ後ろで私が待っていて、入れ替わりに席に入ったのに置きっぱなし。誰が始末するの?「忘れ物ですよ」といった優雅な注意も無視して帰ってしまう。親の顔が見たい。こういう時は、自分で片付けて、ムカムカした状態でどれだけ冷静にショットできるかの精神修養を積むぐらいしか対処方法が無い。ごみとおしぼりを投げつけるほどの勇気を私は持ち合わせていないが、もしそういう行為に出たとしてもごるふの神様は許してくれると思う

 しゃべりオヤジ(妖怪度4)
 女三人寄るとかしましいというが、中年男もまったく同じ、いやそれ以上にたちが悪い。3人以上寄ればとにかく大声でしゃべり、下品に「ゲハゲハ」と笑い、不快なこと極まりない。全く最近の中年は困ったもんである。また、多くの場合その中にはサケクサーやけむり男、教え魔がいる為、不快の相乗効果が生じる。退治方法であるが、幸いなことにこのオヤジたちは単独になると途端におとなしくなる(一人になってもうるさいオヤジは本物の妖怪であるから係わり合いにならないほうが良い)。バッグのネームタグからそいつらの名前を割り出し、家族を装って携帯からごるふ場に電話をかけ、「家が火事ですので至急お帰りください」とアナウンスをしてもらうといなくなる。

 たたきジジイ(妖怪度5)
 1球打つたびに、マットを「どん」とクラブヘッドで叩く迷惑なオヤジ。上手く打てない悔しさでそうしたい気持ちもわからんではないが、毎回毎回「どん」「どん」と周りに響きわたる不快な音を発し続ける。一度気になると規則的に襲ってくるその音でこちらの集中力はずたずたである。自己顕示欲か?単なる癖か? しかしたいていの場合、会社や家庭で上司や妻に苛められている腹いせにマットを叩かざるを得ない、というある種かわいそうな妖怪ではある。退治方法は、「ジジイが叩いた瞬間にこちらもマットを叩くのを何度も繰り返す」だが、無神経な輩が多いので気づかないことも多い。余計に周りに迷惑をかけると言う危険もある。集中力を高める試練だ、と思うしかない。

 教え魔(妖怪度1000000000000000000000000000000000000000000000000000000000)
 ごるふの妖怪の中で、スコアを誤魔化す「ウソツキー」よりも始末に負えない、最低の妖怪。普段はむっつりしているくせに、自分より下手な人間を見つけるとにやにやし出す。また、異様に地声が大きい。左右5打席ぐらい、計10人もの人間に延々と自説を垂れ流し、ひとり悦に入る。周りはいい迷惑である。挙句の果てに実演するが、これがまたお笑いで、上手いためしが無い(この妖怪のハンディキャップは大体10から15の間であるが、コントロールカードを極限まで誤魔化して得たものである場合が多い)。自分よりも下手な人間を見抜くことに特殊な能力を持ち、自分より上手い人間には敵愾心からか異様に卑屈な態度をとる。恐らく実社会でも「上にへつらい、下に威張り散らす」生き物であることは想像に難くない。
 こういう妖怪に取り憑かれたらその人のごるふ人生は終わりである。練習場に行くたびに揉み手をしながら近づいてくる。練習場を代えても、いずれまた取り憑かれる(色々な練習場を回っているのだ)。従って、最初に接近遭遇した時にしっかり退治しないととんでもなく人生の無駄になる。
 退治方法は、他人が教わっている場合は、頃合いを見計らって「ぷっ」と吹き出してやったり、さも馬鹿にしたように独り言気味に「ふぅ〜ん(「〜ん」の部分は音を上げながら)と言ってやる(ただし妖怪より下手だとこちらが取り憑かれる)。自分が教わっている場合は教われば教わるほど下手に打つ。「あんた才能無いなあ」とか何とか言われたら「あんたも教える才能無いよなあ」と言い返す。それで角が立つなら、何気なく「私はハンデ6まで行ったんだけど、腰を悪くしてねえ・・・」とか、「プロに教わりながらスウィングを改造中なんですよ」とか、「小指が無いから上手くグリップできねえんだよ!」などと言えばすごすごと消えていく。「江連さん直々に教わったんですけどねえ」とか、「ブッチハーモンのレッスン会で、今の打ちかたで良いと言われたんですけど」と言うのも効果的だ。妖怪退治には嘘も方便である。
 ごくまれにだが片手シングルクラスの教え魔が存在する。この妖怪への対処は非常に難しい。土下座して謝るか、地球の反対側まで走って逃げるかであるが、もしそのシングル教え魔が上司や先輩や家族で、どうしても逃げられない時はごるふを止めるしか方法はない。さもなくば、頭の中がハエになってしまうだろう。

 最後に、

「としよりを 疎むないずれ 行く道だ」
「若者を 厭うなかつて 来た道だ」
「人のふり見て我がふり直せ」

とオヤジ臭い言葉でこの妖怪シリーズを締めくくることとする。


編者注:自信作である。昔から、こういう意味のない分類、体系化は得意だった。
ただ、この特技は仕事や日常生活に役立ったためしがないのが悲しい所だ。


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