プロジェクトα 「あるダッファーの挑戦 スライスを撲滅せよ」
(2002/7/17)


 
(田口トモロヲ氏のナレーションを思い出しながらお読み頂くと面白さが倍増します。ちなみに、本家プロジェクトXのウェブページはここです)

 (BGM 「地上の星」〜フェードアウト)

 平成14年 夏
 一人の男がごるふ練習場にいた

 ヒロ 39歳 
 ごるふをこよなく愛するダッファーであった



 その日 彼は悩んでいた
 スウィングが固まらない
 彼はスウィング改造とグリップ改造に取り組んでいた
 孤独な 闘いだった

 彼はサンドウェッジを持った
 まともに当たらなかった
 ヒロの背中に 戦慄が走った

 次に7アイアンを持った
 当たらない・・・ 
 ボールは 力なく 右方向へ飛んだ

 まさかと思い ドライバーを手にした
 しかし 結果は同じだった

 男は考えた
 どこかが間違っているはずだ

 ヒロは悩んだ
 練習場の椅子に腰掛け 月日がたつのも忘れて悩みぬいた
 いつしか 季節は夏になっていた



 ヒロは ある奇策を思いついた
 それは ごるふの常識を覆すものだった

 「右方向に曲がるのはクラブの軌跡の問題だ。だったら、その軌跡を強制的に直す姿勢を取れば良い」

 ヒロは 周囲の誰もが驚くほど 左を向いて構えた
 誰もが 無謀と言った 
 「そんなスタンスではスライスがひどくなるばかりだ」 と誰かが笑った

 しかし ヒロは静かにバックスウィングを開始した

 (SE ボールを打つ音)

 ボールは    真っ直ぐ     飛んだ

 ヒロは 思い切ったオープンスタンスで 強制的にインサイドからの軌跡を 作り出した
 それは 逆転の発想だった

 (BGM 「ヘッドライト・テールライト」 フェードイン)

 数年後 ホームコースを歩くヒロさんがいた
 あれから 彼のスウィングは安定し コンスタントに140を切れるようになった

 「常識にとらわれたままでは、未だに140の壁は破れなかったでしょうね」
 屈託のない笑顔で ヒロさんは笑った
 まるで泣いているかのような 笑顔だった



編者注:この物語はフィクションです。決して真似をしてはいけません。