序章
第一章 興奮から感動へ 仕事の都合で遅くなり、前の日布団に入ったのが午前2時半。しかし、普段でもラウンドの前日は寝られないのに、今回はあの神戸ゴルフ倶楽部である。もう嬉しくてワクワクして、とても寝られる状態ではない。結局、うとうとしだしたのは4時頃だろうか。そして起床は5時半。 私の住んでいるところから神戸ゴルフ倶楽部のある六甲山頂までは1時間30分。しかし、一度大阪市内方面に向かわなければならないため、時間の予測が立てられない。スタートは9時頃という話だったが、8時頃に到着する予定で、念のため6時に家を出る。途中、多少の渋滞はあったが何とか時間通り到着した。
「スタートはいつでも結構ですよ。もしよろしければ、奥でお茶でも飲んでゆっくりされてはいかがですか?」と支配人(?)の方が声を掛けてくれた。そう、ここにはスタート時間は存在しない。メンバーの人は、ふらっと現れ、思い思いの時間にスタートしていくのだ。六甲山頂は平野部より5度〜10度ぐらい気温が低く、つまり避暑地であり、9月になればもうオフシーズンで人通りもまばらになる。エントリーも少ない。この日で、20人ぐらいだったろうか。 せっかくなので食堂へ移動する。受付を左手に見て、奥へ進んでいくとまずは歓談室である。広さは小学校の教室ぐらい。下の写真のような椅子とテーブルが数セット。木枠の窓を通して朝日が差し込む様が懐かしい。
「ラウンドせずに、このまま1日中ここに居ても十分満足ですね」などと喋りながら、我々はスタート前の至福の時を過ごしたのであった。 第2章 地上の楽園 さて、いよいよスタートだ。 ここでは学生のキャディが担ぎで付いてくれる。従って、持っていけるクラブは10本だけで、その10本を専用のキャディバッグに入れ替えてラウンドするのだ。私はウッド3本と4アイアンを残し、5アイアン以上でラウンドする事にした(後に激しく後悔することになるのだが)。 ちなみに神戸ゴルフ倶楽部はアウトが30、インが31のパー61のコースで、パー5はなく、7個のパー4と11個のパー3からなる。最も多いのが190ヤード前後のパー3である。今回はアイアンだけでラウンドしようと思った(何故かウッドを振り回すのが邪道に思えたのだ)のだが、せめて4アイアンは入れるべきだった。
この海と空に向かって打っていくスタートホールは170ヤード・パー3。わずかに打ち下ろし。私は7番アイアンを手にフルショット。いつものトホホたる私ならここでチョロでもしてコケるところだが、この日はおちゃらけナシである。芯を喰った感触を手に残してボールは空高く舞い上がり、やがて雲に重なって見えなくなったのであった。 しかしホールを重ねていくにつれ、ここがまさに自然の地形と戦うコースであることを思い知らされる。3番ホールは182ヤードしかないのに、パー4なのである。何故か?
あっ、笑いましたね?そんなコース、あるわけないと思いましたね?誇張にも程があると思いましたね?違います。この絵は100%真実です。つまり、10月13日に紹介した、ここのウェブで書かれてあるイラストや文章は、全くその通りなのである。ちなみに私は5アイアンでフルショットしたが、7合目までしかボールが届かず、2打目をオーバーさせ、3オン2パットのボギーであった。恐るべき182ヤード。ここをワンオンするためには、7アイアンの高さで220ヤード打つ必要があるだろう。 しかし、このホールはまだまだ序章に過ぎなかったのだ。 第三章 ゴルフの原点 美味しい料理をお腹いっぱい食べているような、冬の寒い夜に熱いお風呂に浸かったような、くたくたに疲れ切った日に暖かい布団に潜り込んだ時のような、好きになった人と初めてデートしているような至福の時間が流れる。スコアなんてどうでも良いと本心から思えるラウンド。
ミドルアイアン(あるいはロングアイアン)の多用 高い技術を要求されるパーセーブとそこそこの難易度のボギールート しかしほんの少しのミスがダブルボギーにつながるグリーン周り とんでもない傾斜地からのショット 打ち上げ・打ち下ろしを考えた残り距離の計算 風の計算 砲台の、ごく小さな、それでいて止まらないグリーン セカンド地点に行ってみないとライがわからないブラインドホール オーガスタナショナルのように早いグリーン ボールが120度曲がるライン 深いラフ 少ないOB 各ホールがはっきりとした個性を持ち、それぞれで味付けが全く違う。何度回っても飽きないコースであると思う。例えば7番ホール、260ヤードパー4。
そして例えば13番ホール。193ヤード打ち下ろし、パー3。打ちおろしをみて185ヤード先の、とんでもなく小さなグリーンを狙う。もちろん砲台グリーンで、奥は強い受け傾斜。その上はOB。今年のジ・オープンの舞台となった、ロイヤルトゥルーンの8番ホールパー3<Postage Stamp>を彷彿とさせる。
雲の上にいるような時間はあっという間に過ぎ、4時間弱で1ラウンド(スルーでラウンドできるのだ)こなした我々3人は昼食を取ることにした。 最終章 本物のゴルフ 昼食は、せっかくだしここでしか食べられないものを注文することにした。神戸といえば、もちろん洋食である。
時間は1時。日は高く、空はどこまでも青く、雲はどこまでも白い。当然の如くあと9ホールラウンドすることに決まった。今度はもう少し頑張りたいものだ。 しかし、普段から運動らしい運動を全くしていない私の足は、1ラウンドの山歩きで少しトホホってきたようである。おまけに足首の具合もすこし気になる。相変わらずボギーペース。
15分ほどで小降りになりプレーを再開した我々であったが、8番ホールをホールアウトした段階でガタガタと震える井上君の体調を考えホールアウトすることにした。しかし風雨は冷たく吹き荒び、初夏の気候から一気に冬の気候へ変わった状況でプレーを続けていたら我々も風邪を引くところであっただろう。なんせ、一気に手がかじかんで動かなくなったんだもん。しかし、それも今となっては良い思い出である。 クラブハウスへ戻り、温かい風呂で生き返った我々はラウンドの余韻を楽しむかの如く食堂へ集まった。自家製ハニーレモン(冷えた体には最高に美味しかった!)を飲みながら、幸福な1日を振り返る。私は、自分が今までよりほんの少し謙虚に、そして敬虔な気持ちになっていることを自覚した。そして、この日のことは恐らく一生忘れないだろうと思った。
今回八方手を尽くしてお誘い下さったO谷先輩、メンバーとしてご紹介下さったO谷先輩のご従兄弟様、神戸ゴルフ倶楽部のスタッフとメンバーの皆様、そしてアーサー.H.グルーム氏と設立メンバーの皆様に、この場を借りて心からお礼を述べたいと思います。本当にありがとうございました。
何故なら、本当のゴルフがここにはあるのだから。 追記 神戸ゴルフ倶楽部は、原則的に会員の紹介がないとラウンドできません。また、見学だけさせて欲しいという方がたくさん来られるらしいのですが、それも原則的にはお断りしておられるようですのでご注意下さい。 また、ラウンドされる方は山歩きするつもりで体調・準備を整え、飲み物やレインウェアなどを自分で持ち運びできる小さなバッグを持って行かれた方が良いと思います。杖代わりに傘を持参する方が良いかも(^^;。 |